「眠らなきゃいけないのになかなか眠気がこない」「眠れないまま目をつむっていたら、夜明けが近づいてきてしまった」……。
そんな経験がある人は多いのではないでしょうか。眠れないまま時間が経過するごとに、ストレスもどんどんたまってしまいますよね。
眠りに関するトラブルは、体や心が不調を訴えているサインかもしれません。
特に体は疲れているのに眠気を感じられない場合や、毎日のように不眠の症状に悩まされている場合は、解決をただ待つのではなく自ら生活や環境を改善していく必要があるでしょう。
今回は、眠れないまま朝になったときに考えられる原因や対処法をご紹介します。
また不眠の症状が続くときに考えられる睡眠障害の種類についても解説していきます。ストレスの原因に立ち返り、無理のない範囲で改善方法を探していきましょう。
朝まで眠れない4つの原因
眠れないまま朝になったときは、今の自分が抱えている問題と向き合うことが大切です。
ここでは、朝まで眠れない原因や寝付きが悪い原因をご紹介します。
今まで過ごしてきた環境を振り返り、違和感を抱くシーンや我慢を強いられてきたシーンなどを思い出してみましょう。ストレスの原因にこそ、生活改善のヒントがあるものです。
1.大きなストレスや悩みを抱えている
大きなストレスや悩みを抱えている人は、朝まで眠れないなどの不眠症状が現れやすくなります。
特に神経質な人や生真面目な性格の人はストレスがたまりやすく、眠れない状態を気にしてさらなる不眠を誘発してしまいがちです。
眠る前にベッドの中でストレスの原因を思い出し、頭が冴えてしまうことも。イライラを感じると体が緊張し、どんどん眠りにくい状態になってしまいます。
また精神的な疾患を患っていることが原因で、不眠の症状が現れているケースもあるでしょう。
2.睡眠環境が合っていない
朝まで眠れない場合は、睡眠環境が合っていない可能性があります。
例えば、枕や布団が劣化して自分の体に合わなくなっていたり、そもそもサイズや形の相性が悪かったりする場合もあるでしょう。また寝室の温度や湿度なども眠りに影響を及ぼします。
厚生労働省によると、快適な睡眠のために適した温度は20℃前後、湿度は40~70%前後、布団の中の温度は約33℃といわれています。
エアコンや加湿器、除湿器などを上手に使えていないと、睡眠を妨げる原因になってしまうでしょう。
3.体が覚醒状態になっている
私たちの体は、交感神経が活性化したり覚醒作用があるホルモンが分泌したりすることで、覚醒を感じます。
ところが、何らかの原因で就寝時にも交感神経が優位に働いたり、ホルモンの分泌が乱れたりすることで、本来なら眠る時間であるにもかかわらず目が冴えてしまうのです。
ホルモンバランスはストレスや不摂生な生活によって乱れる傾向にあるため、慢性的に不安を抱えている人は不眠につながりやすいといえるでしょう。
また更年期障害でもホルモンバランスが乱れやすいといわれています。
4.睡眠障害を患っている
眠れないまま朝になった日が続く場合は、睡眠障害を患っている可能性があります。
睡眠障害は生活に関わる深刻な問題ですが、目に見える症状や痛みとして現れないため、症状を軽視してしまうケースが多い傾向です。
また本人が悩んでいてもなかなか周りの理解が得られず、ときにはだらしない人というレッテルを貼られてしまう場合もあります。
一過性の軽い不眠症状は誰にでも現れる可能性はありますが、日常生活に支障をきたすほど症状が顕著である場合は、できる限り早い受診が求められます。
眠れないときに考えられる6つの睡眠障害のタイプ
睡眠障害では不眠のイメージが強いかもしれませんが、症状は眠れないことだけではありません。
ここでは、眠れないときに考えられる睡眠障害のタイプを6つご紹介します。自身のタイプを知り、改善方法や治療方法につなげていきましょう。
※ご紹介する睡眠障害のタイプは、多種多様な病気の症状を大きく分類したものです。自身の睡眠障害や症状を分類するための参考として活用してください。
1.不眠タイプ
不眠タイプは、寝るべきタイミングでなかなか寝付けなかったり、睡眠を維持できずに途中で起きてしまったりすることです。
例えば、目をつむってもなかなか眠れない、一度夜中に起きてしまうと二度寝ができないなどが挙げられます。
不眠タイプは入眠困難・中途覚醒・早朝覚醒の3つに大きく分けられ、いずれの場合も睡眠不足や熟睡感が得られないことで翌日の体調に影響を及ぼします。
なんとか入眠しようとお酒に頼ってしまうケースがあるため、アルコール依存症が懸念されるでしょう。
2.呼吸タイプ
呼吸タイプは、睡眠中の呼吸が異常な状態になっていることです。睡眠呼吸障害を患っている可能性があります。
具体的に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状が代表的な睡眠呼吸障害です。睡眠時無呼吸症候群では寝ている間に呼吸が止まってしまい、血液中の酸素濃度が低下してしまいます。
多くの場合、一定の時間が経過すると呼吸は再開します。しかし、眠りが浅いため睡眠の質が下がり、朝起きても疲労感が取れない状況が続くのです。
また睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞・脳梗塞・生活習慣病など、重大な疾患のリスクを上げるため、早めの治療が重要です。
3.過眠タイプ
過眠タイプは、日中に強烈な眠気を感じて起きていることが難しくなることが特徴です。ナルコレプシーや睡眠不足症候群が代表的な病気です。
けがや事故のリスクが上がるだけではなく、周囲との円滑なコミュニケーションや人間関係の構築が困難になってしまいます。
睡眠不足症候群では、慢性的な睡眠不足が原因で日中の眠気を感じるケースが多いことが特徴です。ナルコレプシーでは、夜に十分な睡眠時間をとっている状態でも強い眠気を感じてしまいます。
周囲から自己管理不足が原因であると誤解されやすく、本人が一人でストレスを抱え込んでしまうケースもあります。
4.体内時計タイプ
体内時計タイプは、概日リズム睡眠障害という睡眠障害を患っているケースです。人間の体には、自分の体内時計のリズムに合わせて眠気や空腹を感じる仕組みがあります。
しかし概日リズム睡眠障害では、何かしらの理由でこのリズムが崩れ、夜中に眠れなくなってしまうのです。
リズムが崩れる原因には、夜勤や不規則な生活習慣による昼夜逆転が挙げられます。中でも光・食事・運動・仕事・学校などが深くかかわっていると考えられています。
寝付きが悪くなるだけではなく、朝早く起きてしまったり日中に眠気を感じたりすることも特徴です。
5.随伴(ずいはん)タイプ
随伴タイプは、睡眠時随伴症という睡眠障害が該当します。睡眠時随伴症とは、おもに睡眠中に望ましくない現象が起きる状態です。
例えば悪夢・寝ぼけ・寝言・激しい寝相・夜驚・夜尿・歯ぎしり・夢中遊行などが含まれます。
睡眠時随伴症の中にはレム睡眠行動障害・睡眠時遺尿症・乳児睡眠無呼吸症などがあり、中でもレム睡眠行動障害は高齢者に多いとされる症状です。
自身の眠りの質が下がるだけではなく、睡眠中の異常な行動によって家族や周囲の人たちの健康を損なわれたり、けがをさせてしまったりする可能性が危惧されます。
6.運動タイプ
運動タイプは、睡眠関連の運動障害を患っている状態です。睡眠時に不快感を抱き、脚の震えや歯ぎしりなどの運動衝動が現れることが特徴です。
ベッドに入って寝ようとしても足元に不快な感覚を覚え、じっとすることができません。
代表的な疾患は「むずむず脚症候群」とも呼ばれるレストレスレッグス症候群です。眠くても眠れないというつらい状態が続き、眠りの質が低下してしまいます。
市販の睡眠薬だけでは症状が改善されないケースが多く、専門の治療が必要です。
眠れないまま朝になったらどうする?5つの緊急対処法
ここでは、眠れないまま朝になってしまったときの対処法をご紹介します。どんなに眠れなくても、朝になれば学校や会社に行かなくてはいけませんよね。
少しでもつらい時間を短くするために、生活の中で取り入れられる工夫やアイデアを学びましょう。
1.お風呂や運動で体内時計を調節する
眠れないまま朝になった日は、お風呂や運動を取り入れて体内時計を調節しましょう。
可能な限り本来のスケジュール通りに行動し、体に「いつも通りの一日である」と認識させることが大切です。
疲れた体をリラックスさせるために、朝はシャワーよりもぬるめのお風呂に浸かるとよいでしょう。
また体内リズムの調整では太陽の光を浴びることが推奨されます。午前中に日光を浴びると夜に眠くなりやすいため、体のペースを元に戻すサポートとなるでしょう。
2.できるだけしっかりと朝食をとる
体内時計のリズムを整えるためには、食欲がなくてもなるべく朝食をとることをおすすめします。朝食の内容は、できるだけ眠くならない食材選びが重要です。
血糖値の急激な上昇や下降を防ぐために、低GI値の食べ物を選びましょう。
例えば、蕎麦・パスタ・バナナ・りんご・ライ麦パン・大豆などが挙げられます。反対に白米・白いパン・もち米などはGI値が高く、血糖値の上昇・下降が起こりやすい傾向にあるため避けましょう。
3.15時までに短時間の仮眠をとる
眠れないまま朝になった日は、日中に強い眠気を感じやすいものです。ミスや事故の可能性を最小限にするために、30分以内の仮眠をとりましょう。
30分以上の仮眠では夜中の睡眠に影響を与えてしまう可能性があるため、つらくてもしっかりアラームで起きることが大切です。
また15時を超えると、体は夜としての体内時計を刻み始めるため、仮眠は15時より早い時間に終わらせることをおすすめします。
4.定期的な刺激を取り入れる
十分に睡眠をとっている人でも、退屈な会議やつまらない仕事が続くと眠気を感じてしまいますよね。
反対に、好奇心をくすぐる作業ややりがいのある仕事では、睡眠不足でも眠気を感じにくいものです。
眠れないまま朝になった日も同様に、退屈さを感じると急激に眠気がやってきます。
定期的に外界から刺激を取り入れて、脳を覚醒させていきましょう。人との会話や適度なプレッシャーもよい刺激になります。
5.翌日のために、寝坊ではなく早寝で補う
睡眠不足の日は、つい前日の分まで長時間眠りたくなってしまいますよね。
もちろん、疲れた体に充分な睡眠は必要です。しかし寝不足だからといって、翌日寝坊してしまうと睡眠のリズムがさらに崩れてしまいます。
翌日の起きる時間は普段と同じに設定し、なるべく早めに眠るように心がけましょう。睡眠不足は寝坊ではなく、早寝で補うことが基本と覚えておいてください。
朝まで眠れない原因を解決する3つの根本的対処法
ここでは、朝まで眠れない原因を解決するための対処法を3つご紹介します。
眠れない原因は人それぞれですが、多くの場合は体と心のストレスをケアしつつ睡眠環境や習慣を改善することで、解決に向かっていく可能性が高いでしょう。
眠れないまま朝になった日が続く人は、ぜひ参考にしてくださいね。
1.明確なストレスの原因をケアする
眠れないまま朝になった日が続く際は、明確なストレスの原因をケアすることが大切です。
自分を取り巻く環境の中で、ネガティブな感情を抱く要因を書き出していきましょう。問題に優先順位をつけて、一つひとつクリアしていくことでストレスを緩和していきます。
2.寝具や寝室の環境を改善する
睡眠不足の原因は、寝室の環境が自分に合っていないからかもしれません。温度や湿度を調整したり、寝具を新しく買い替えたりすることをおすすめします。
リラックスできるアロマを焚いたり、リラクゼーション音楽を流しながら寝たりするのもよいでしょう。
3.ブルーライトから離れ、眠りやすい体をつくる
眠りの質を上げるためには、就寝前にブルーライトから離れる時間をつくることを推奨します。
寝る前はスマートフォンやパソコンの利用を極力控え、目を酷使しなくても楽しめる娯楽を見つけるとよいでしょう。
どうしても電子機器が必要な場合は、ナイトモードやブルーライトカットシートを活用してくださいね。
睡眠の悩みで病院を受診する目安
誰にでも、なかなか寝付けない夜やイライラして眠れない日はあるものです。特に女性の場合は、生理前後で心と体のバランスが不安定になって不眠の症状が現れることもあるでしょう。
1日~数日程度の睡眠の悩みであれば、すぐに病院に行かずに様子を見てもかまいません。
病院を受診する目安は、睡眠に関する不調が1ヵ月以上続いている場合です。
また1ヵ月以内でも日常生活に著しく悪影響を及ぼしている場合や、自身や周囲の心身に危害を加える可能性がある場合は、なるべく早めに受診することをおすすめします。
診療する科は、睡眠障害の原因が心因性である場合、内科・心療内科・精神科を選ぶとよいでしょう。
いびきや日中の眠気で悩んでいる人は、呼吸器や循環器を取り扱っている内科・耳鼻咽喉科をおすすめします。
不眠は心と体のサイン。原因と向き合ってゆっくり解決していこう
今回は、眠れないまま朝になった場合の原因や対処法などをご紹介しました。睡眠障害は自己判断だけではなく、周りからのアドバイスや助言によって気づくケースも多いものです。
眠りの質を上げるためには周囲の声に耳を傾け、症状を楽観視せずに専門的な病院を受診することが大切です。
また不眠にはストレスが関わっている可能性があるため、問題の原因を根本的に解決することも重要だといえるでしょう。
以下の記事では、ストレスで眠れない原因や対処法などをご紹介しています。眠りのトラブルを抱えている人は今一度問題と向き合い、無理のない範囲で解決策を模索していきましょう。