十分な睡眠時間と良質な睡眠は、心と体の疲労を回復させるために重要な役割を持ちます。しかし残業や勉強などで忙しい日々が続いている人や、つい夜更かしをしてしまう人は、毎日の睡眠時間が不足しがちです。
不足した睡眠時間を補うために、休日に長時間寝る人も多いのではないでしょうか。人によっては、休日の寝だめに解放感やリラックスする感覚を抱いている人もいるでしょう。しかし、寝だめが続くと心身のバランスを乱してしまう可能性があります。
今回は、寝だめの意味や注意点、毎日の睡眠時間を安定させるための方法などをご紹介します。食事や運動と同じように、満ち足りた睡眠は健康の基本です。つい寝だめをしてしまう人はぜひこの機会に習慣を変え、健やかな日々を目指していきましょう。
寝だめ(補充睡眠)とは
寝だめとは、不足した睡眠時間を長時間眠ることで補う行為です。
そのため、寝だめの「ためる」というワードは「ためる」の本来の意味から考えると不適切といえます。あくまで睡眠時間を補う行為、と認識しましょう。
寝だめでは一時的に不足した睡眠時間がケアされ、疲労が回復します。しかし、2日分の睡眠時間を得たからといって、その後2日間寝ずに動けるわけではありません。
これは食事量を体内にためられない状態と似ています。2日分のカロリーを摂取したからといって、その後2日間何も食べずにいることは難しいですよね。
また寝だめは医療用語ではありません。一部の睡眠専門医は「補充睡眠」という言葉を使っているケースもあります。
寝だめはできない!知っておきたい寝だめの注意点
ここでは、健康的な睡眠のために知っておきたい寝だめの注意点についてご紹介します。
睡眠習慣を改善するためには、現在抱えている課題やリスクについて学ぶことが大切です。寝だめを続けることによるデメリットや注意点を知り、生活習慣の変化に役立てていきましょう。
1.人間の体は睡眠時間をためられない
人間の体は、睡眠時間をためられません。例えば1日の適切な睡眠時間が8時間の場合、丸2日徹夜した後に16時間の睡眠時間を設けたとしても、十分な睡眠時間を取れているとはいえません。
休日に長時間眠るのではなく、毎日平均的な睡眠時間を設けることが大切です。
慢性的な睡眠不足は日中の眠気を生じさせるだけではなく、仕事や学業への意欲の低下や記憶力の減退などを引き起こします。
また体内のホルモン分泌や自律神経機能にも悪影響を及ぼしてしまうこともわかっています。
2.体内時計がどんどんずれてしまう
寝だめの習慣を繰り返していると、体内時計がどんどんずれてしまいがちです。人間の体には、24時間周期のリズムで昼夜の変化に同調する仕組みがあります。
体内時計を正常に保つためには、毎日決まった時間に食事をしたり眠りについたりすることが大切です。
体内時計が乱れると理想的な時間に眠気を感じにくくなり、ホルモンの分泌や生理的な活動のコントロールもしにくくなってしまいます。
どんなに健康的な食事をして適度な運動を取り入れても、毎日の就寝時間がバラバラの場合は体内時計が乱れ、心身に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。
3.毎日安定した睡眠時間を確保することが大切
健康的な心身を保つためには、寝だめをするのではなく毎日安定した睡眠時間を確保することが大切です。
私たちは一人ひとり、それぞれの理想の睡眠時間を持っています。自分に合った睡眠時間は生まれたときから決められており、他人と比べるものではありません。
一般的には、10歳代で8~10時間、成人以降50歳代までは6.5~7.5時間、60歳代以上で6時間弱の睡眠時間が理想的といわれています。
また疲労を回復するためには睡眠時間を確保するだけではなく、睡眠の質自体を底上げしていく工夫が求められるでしょう。
寝だめにはメリット・効果はある?
忙しい日々の中「平日の寝不足は休日の寝だめで解消したい」と思っている人は多いかと思います。しかし残念ながら、寝だめにはポジティブな効果やメリットはほぼありません。
寝だめを続けていくと体内時計やホルモンの分泌が乱れ、体調不良を招く可能性が高いといえるでしょう。
しかしストックホルム大学の研究チームによると、平日にある程度の睡眠時間さえ確保していれば、週末に長時間の睡眠時間をとっても死亡リスクが上がらないことがわかっています。
寝だめならではのメリットとはいえませんが、日々の基本的な生活習慣が大事であることがわかります。
また週末に時間に縛られずにたっぷり睡眠を得られた場合、人によっては精神的なストレスが解消される可能性もあるでしょう。
寝だめ自体の効果は不確実ではありますが、寝だめによって心が癒され、平日へのモチベーションに変換されるケースがあります。
寝だめで睡眠時間を確保している人は「睡眠負債」に要注意
休日の寝だめで普段の睡眠不足を補っている人は、睡眠負債に注意する必要があるでしょう。
睡眠負債とは、睡眠不足の蓄積により心身にさまざまな不調が生じることです。以下に、睡眠負債によって起こり得る心身のトラブルの例をご紹介します。
- 日中の眠気
- 意欲低下
- 記憶力減退
- 心身の疲労がリセットされない
- 食欲の増大
- 生活習慣病のリスクの増大
- 事故やけがの可能性が増える
心の疲れがリセットされないとイライラしやすくなり、周囲と円滑なコミュニケーションが取りにくくなることもあります。
精神的に余裕がなくなり、重大な事故やトラブルを発生させてしまう可能性も増えるでしょう。
平日に安定した睡眠時間を得るための5つのコツ
ここでは、平日に安定した睡眠時間を得るためのコツを5つご紹介します。
自分に合った睡眠時間を毎日取り入れるためには、起床時のライフスタイルに変化を取り入れることが大切です。無理のない範囲で新しい習慣を導入し、健やかな睡眠につなげていきましょう。
1.朝晩にやるべきことをタスク化させる
平日に安定した睡眠時間を得るためには、朝晩にやるべきことをタスク化させることをおすすめします。
睡眠時間が短くなりやすい人の中には、明日やるべきことを考えているうちに時間が経過し、就寝時間が遅れてしまうケースがあります。
「起きたらまず〇〇をする」「△時までに朝食を終えているようにする」などのように、タスクを定量化させて日々のルーチンに取り込むことで、朝の思考の必要性を減少できるでしょう。
夜の過ごし方も同様にタスク化させ、不必要な行動を減らすことが大切です。
2.就寝前の習慣を変えスムーズな眠気を促す
寝だめをしがちな人は、就寝前につい夜更かしをしてしまいやすい傾向にあります。
自然な眠気を感じたまますぐにベッドに入れるように、帰宅後から就寝までの習慣を変えてみましょう。ポイントになるのは、人体の深部体温の変化です。
人間の体は、深部体温が下がることで眠気を感じる仕組みになっています。
就寝の2~3時間前にぬるめのお風呂に入浴することで、自然な眠気を感じやすくなるでしょう。白湯やノンカフェインのホットドリンクなどを取り入れる方法もおすすめです。
3.日中に光を浴びて夜は室内を暗くする
日中に光を浴びる習慣には、体内時計を整える効果があるといわれています。
昼間に明るい光を感じることで、夜にメラトニンというホルモンが分泌されます。メラトニンは自然な眠気を誘発するため、日々のスムーズな睡眠につながるでしょう。
4.寝室環境を見直し改善する
安定した睡眠時間を得るためには、ベッドに入ったらすぐに眠れるような良質な寝室環境が大切です。
寝室の温度は季節に応じて13~29℃が最適とされ、寝具の内部は33℃前後が推奨されています。枕の形や寝巻きの肌ざわりなどにも変化を取り入れてみましょう。
5.睡眠計測アプリ・睡眠サポートアプリを使う
自分にとって良質な眠りの形を見つけるために、睡眠計測アプリや睡眠サポートアプリの導入をおすすめします。
睡眠関連アプリの中には、浅い睡眠と深い睡眠を波形で教えてくれたり、いびきや寝返りなどの回数を記録してくれたりするものも展開されています。
特に寝室環境を変える際は、環境の変化が眠りにどのような影響を及ぼしたのかを確かめるために導入してみましょう。アプリによっては、睡眠に適した音楽やアラームのサービスも搭載されています。
正しい睡眠習慣で健やかな日々を
今回は、寝だめの注意点や安定した睡眠時間を得るためのコツなどをご紹介しました。
ストレスや悩みを抱えている場合、生活習慣や寝室環境に変化を取り入れてもなかなか寝付けないものです。
毎日の睡眠時間が短くなると、休日の寝だめの習慣もなかなか拭えません。以下の記事でも正しい睡眠の知識について解説しているのでぜひ参考にしてみてください。